前回の記事で、金融庁が発表した今後、老後には2,000万円が必要という発表をマスコミが取り上げない、という記事を書きましたが、ありがたいことに、その翌日以降の月曜日や火曜日にかけて、一斉にTVで取り上げられました。
私個人は、「よかった。これで世間一般に貯蓄・投資の必要性が行き渡る」と喜んでいたのですが、そのニュースに対するマスコミ、政治家、一般市民の反応を見て、非常に驚きました。
みなさん、怒っていらっしゃるのです。なぜ?
ある野党の政治家は「謝罪しろ」だとか、一般市民のインタビューでは「今まで掛けた年金を返してほしい」だとか、しまいには麻生金融担当大臣まで「老後が赤字になると誤解を招くようなもので適切ではなかった」というような趣旨の発言をする始末。
当初、私には全く理解できませんでした。
金融庁も、良かれと思って発表したと思いますが、予想外の反応に驚いていると思います。
私の数少ない海外経験からも、日本人の民度は非常に高く、誇りに思ってよいものだと自負していますが、こと「お金」に関しては、海外の人々と比べて、あまりに無知な方が多いということが今回の件で残念ではありますが、はっきりしたと思っています。少なくとも、自国の年金システムがどういうしくみで運営されているかを全く知らないということに驚くばかりです。
でも、これは「お金は卑しいもの、汚いもの」という根底を相変わらず継承していることと、最低限のお金の教育すらしてこずに、「如何に優秀な労働者を作り出すか」という考えのもとでしか教育してこなかったことに起因していると思います。
年金は現役世代から保険金として集め、すぐ年金生活者に渡すしくみなので、個々人ごとの年金を積み立てて国が運用しているのではなく、返せと言われても返す財源なんてありません。
GPIFのことを誤解されている方が多いようですが、GPIFが運用している資金はたかだか156兆円(年金積立金運用独立行政法人HPより)で、年金給付額は毎年、38.5兆円を歳入で国民から保険料としてもらい、55.1兆円を支給しています。 (厚生労働省-年金局HPのPDF5ページ目より)
つまり、GPIFの運用資金など、3年分もないのです。
年次の資金運用結果に、野党が「赤字だ」、「何で株なんかに投資してるんだ」と騒いだりしていますが、黒字や赤字で一喜一憂するのは、実はあまり意味がありません。
お分かりの通り、年金は労働人口と年金受給者の人口推移に大きく依存するため、年金が財源不足になるのは、何十年も前から分かっていたことなので、なぜ今更、この事で目くじらを立てられるのかがわからない、というのが私の偽らざる気持です。
金融庁のiDeCoや積立NISAを活性化させたい気持ちの裏には、このような背景があるので、現実を知っている方は淡々と資産運用を引き続きやっていきましょう。
2,000万円は最低限の不足額なので、2,000万円ではゆとりのある暮らしなんてできませんから。